深紫の雑記帳

移行テスト

【ゲーム】ローグライトブロック崩し『BALL×PIT』

ローグライトブロック崩し
中盤くらいまでやり込んだので、レビューを書いておく。


ブロック崩しにローグライトをくっつけたゲーム性で、弾幕シューティングの要素も少しある。
弾幕ブロック崩しの先輩としては『東方靈異伝』や『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュ123!!』などが挙げられる。そんな事あるか?

一般的なブロック崩しと異なり、ボールの落下ペナルティやバーの角度調整の必要がないのでカジュアルに遊べる。このペナルティの撤廃は本当に革新的で、ブロック崩しの本質ってそこじゃなかったんだな……と思い知らされた。
その代わり、敵が下部まで到達するとHPが減り、ゲームオーバーになってしまう。周回プレイで永続的にステータスを上げ、適切なビルドを発見して敵に勝ち、新たなステージを開放していくのがゲームの流れだ。

1プレイはだいたい15分程度で、忙しい人はゲーム速度の加速も可能。「ファスト」は早送りではなく、難易度上昇であることに注意。
当たり判定の可視化や発見したシナジーの表示など、細かい機能が丁寧で操作性が良い。当たり判定が2つあったり、反対側からボールが来るような個性的なキャラもおり、操作性がガラッと変わるのが飽きづらい。
ただ一部の効果は翻訳の問題か、少し分かりづらい。敵の右側って自分目線で?相手目線で?減速って全部のボールに適用されるの?とか。

決定的な問題点は、ボス戦が遅延しがちなところだ。ボス戦は時間が無制限で、弾幕シューティング要素が強いのだが、ある程度シューターとしての腕があれば無限に耐久ができる程度の難易度に設定されている。
これが本当に嫌で、本来はレベル上げやビルドの失敗によってゲームオーバーになっているはずの場面で、頑張れば勝ててしまう。勝てると言っても耐久弾幕はめんどくさい。ボス戦にも時間制限や発狂モードによる強制終了があるべきだ。

バトルの合間には、町づくりモードが備わっている。町づくりと言ってもシムシティをやらされるのではなく、自分でピンボールの盤面を作れる機能と言った方が適切だろう。
町に建物や畑を設置して、ボール(キャラ)が当たると資源が貰え、色々な機能を強化できる。
これがプレイに起伏をもたらしていて面白い。二種類のゲームを交互にやらされるわけだが、別ゲーと言うほど離れてもいないが、違いを感じられる絶妙なゲーム性だ。


色々と細かい工夫や配慮がなされているが、やはりローグライトなので戦略には最適解があり、飽きが発生する。低価格帯の作品で、値段以上には楽しめるようになっているので、これは全然悪いことではないと思う。

【ゲーム】言語解読とクィア性『7 Days to End with You』

 言葉の通じない謎の女性に保護された主人公が、未知の言語を解読しながら一週間の生活を送って行くゲーム。

 

 対訳も辞書もなく、本当に手探りで未知の言語を訳す必要があるのだが、言語解読の難易度は低めである。基本的に言葉がどのような場面で使われているのかを見て、当てはまる単語を選んでいくだけで物語を理解する事ができる。

 その代わり、架空言語を理解する事でその社会の価値観を理解していくような、言語学的な面白さはない。かばん語や語尾変化の概念も無いので、むしろ言語学に精通しているほど、文字の共通点に意味があるのではないかと深読みをして、解読に詰まってしまいそうだと感じた。

 短いゲームなので、登場する語彙もさほど多くはない。謎の女性は、言語の分からない主人公のために、語彙を絞って話しているのではないかと考えられる。だが、女性以外の登場人物の語彙も少ない事は、ゲームの都合を感じてしまった。現実でも語彙の少ない言語自体は存在するが、それらは単純な概念を組み合わせて複雑な概念を表現していたり、物の区別の仕方が独特だったりするものだが、このゲームの言語にそういったものは感じられなかったからだ。

 

 架空言語のリアリティを考える場合、その言語が書けるかどうかも重要な点だ。やたらと入り組んで装飾的だったりする創作言語は、日常的に使用されているとは思えないので、リアリティに欠ける。

 そういった視点で見た場合、このゲームの言語は全く書く事に適してはいないのだが、これは失語症視点の文字の見え方を表現しているのではないかと思ったので、さほど気にならなかった。文字をあえて読ませる気のない記号的に作る事で、それが象形文字である可能性を排除させたかったのだろう。

 

 ゲームの問題点なのだが、Switchで遊んでみて、全体的に操作にストレスを感じた。

 カーソルの感度が高すぎて、小物を調べるのが大変だった。キャンセルウインドウが出っ放しになって画面が見えなくなってしまったり、書類の拡大表示の際に、背景画面の小物の調査が出来てしまうなど、バグやそれに近い挙動があった。

 また、マルチエンディングで終盤にしか分岐がないのに関わらず、途中から始める機能がないので、EDを見るためだけに作業を繰り返す必要があるのも不便だと思った。

 

 一方、面白かった要素は、未知の言語の正解は誰にも分からないのだという事と、物語のクィア性が結びついているという点だ。

 女性は、戦争で死んだ恋人である主人公を蘇生させる実験を繰り返しているらしいのだが、写真で見られる主人公の見た目は、かなり女性的だ。

 けれども、本当に主人公は女性なのか、写真の人物と主人公は同一人物なのか、女性と主人公の関係性は恋愛関係なのか、正しい事は何一つ分からない。

 この事にはクィア・ベイティング的な嫌らしさを感じないでもないが、それよりも、関係性に名前をつけて、定義する事を拒絶するクィア性を感じた。なにせ、プレイヤーが最初に決めるのは、女性の事をどう呼ぶかという事なのだから。関係性も、名前すらも自由に決めていいというゲームの在り方自体が、一元的な解釈で語られることへの抵抗になっているのだ。

【ゲーム】クトゥルフ釣りゲー『Dredge』

ゲーム画面


 不気味な港町で魚を釣りつつ謎を解明していくゲーム。

 普通の魚の他に、名状しがたい奇形の魚が釣れたり、夜の海に居ると正気度が下がって化け物に遭いやすくなるなど、クトゥルフっぽい世界観をしている。

 ゲーム面の特徴は、魚にはそれぞれ形状が設定されていて、限りある船のスペースに対してうまくパズルのように組み合わせて詰め込む必要がある事だ。時間経過による腐敗や、正気度低下によるペナルティなどもあるので、計画を立てて効率のよい釣りを目指す事がゲームのキモと言ってもいいだろう。

 

 釣りのシステムはタイミングよくボタンを押すありがちなものなのだが、ボタンを押さない事による失敗扱いはない(サルベージは別)し、設定で救済措置もあるので、タイミングゲーが苦手な人にも優しいゲーム設計がされている。

 本作の重要部分は釣り自体ではなく、釣果をどうやって持ち帰るかという部分にある。大きくて複雑な形をした魚は、扱いづらいが売値が高いので、それをメインに釣りつつ隙間に小さい魚を入れるなどといった計画を立てて釣りに行くのだが、道中でレアな魚を見つけて計画が狂ってしまうとか、鮮度を気にして危険な夜の航海を行ったりといった駆け引きのおかげで、何度も新鮮な航海を何度も楽しめるのである。

 サブクエストや収集要素も多く、新しい場所を航海する時には、探検もまた楽しみの一つだ。

 

 このゲームはクトゥルフっぽい世界観をしているが、クトゥルフ神話の怪物が出てくるようなものではない。ラブクラフトの小説を読んだ時に感じる、不気味な海洋生物への恐怖を体験する事ができるので、クトゥルフ神話ではないが、根本的な部分がクトゥルフっぽいという作品だ。

 ラブクラフトの小説の中でも、インスマスの話が直接のインスパイア元だと思われる。ところが、インスマス面をした魚人達が、特にラブクラフトの人種差別的な素朴な恐怖心が表出したものであるのに対して、このゲームは差別的な要素はほとんどない。魚人は出てこないし、時代背景の割に多様な人種や性別のキャラクターが自然に出てくる。

 ラブクラフトの著作を語る上で、差別の話は避けて通れないし、特に魚人ものはなおさらである、という事を踏まえてゲームを見ると、このゲームの世界観は、意図的に脱差別的な海洋ホラーを目指して作られたのかもしれない。

 

 ゲームのビジュアルもとても良く、3Dで描かれる風景は、凹凸やテクスチャの少ないあっさりしたもので、怖さは控えめになっている。

 釣りの場面では、バリエーション豊かな奇形魚のデザインとフレーバーテキストがゲームを彩る。奇形魚は、無理矢理肉体を変質させられたせいで苦しんでいるような設定のものが多いのだが、よくもまあ気持ち悪い魚のレパートリーがこれほど用意できたものだと関心してしまう。ゲーム上では、普通の魚と奇形魚を同じ網に入れても問題ないのだが、食害が起こらないのか心配だ。

 気持ち悪い魚といっても、適度にデフォルメされていて、グロ映画のように見るだけで気分が悪くなる、というようなものではない。見た目でガツンと来る嫌悪感があるのではなく、画面の情報量の少なさが、かえって想像を掻き立てるタイプの嫌悪感がある。釣った後に、「目のように見えるが実は卵」「ヒゲだと言い張っているがどう見ても寄生虫」のようなフレーバーテキストを見て魚の正体を知った時にゾッとするのだ。

 人物のデザインも、不気味さと愛嬌のバランスが良い。初期の頃は陰気で底知れない風に見えた住民達の印象は、交流を進めていったり、明るい人物が登場したりすると、徐々に印象が変わっていくのだ。

 例えば、サブイベントのフードの人々は、意味深なことを言って魚を不気味な食べ方をするが、単に飢えてて死にそうな人で、有益な報酬をくれる良い人たちだと分かると、徐々に可愛らしく見えてくるようになる。

 

 

 一方、このゲームの最大の欠点は、ゲームの難易度が低すぎるという事だ。効率の良い釣りを求められるのはせいぜい中盤までで、徐々にお金が余りだすので、終盤には釣りは図鑑埋めのための作業と化す。

 最初の頃は、何が起こるか分からない夜は恐ろしいが、対処方法が分かってしまえばもう怖くない。

 約20時間くらいのシナリオをクリアする程度なら楽しめるが、最大サイズを更新したり、効率を追求してみるとかの、自分なりのやり込みをしたいという気にはなれなかった。

 

 ムーンフィッシュなどのレア魚の中で、さらに低確率で出現する奇形種の図鑑埋めの難易度の高さは、「難しい」というよりも「面倒」という表現が似合う。これらは出現場所が限られている魚なのだが、闇雲に探し回っているうちは疲れるし、実は全ての魚の出現場所は完全固定だと気づいてしまえば、出現場所を往復するだけの退屈な作業になる。

 魚の出現場所が完全固定なのは、運によって難易度が大きく変化してしまわないと考えれば良いかもしれないが、リアルではなく、興醒めだ。

 こうした図鑑埋めの難しさは、終盤に手に入る撒き餌によって解決できるのだが、撒き餌の強力さは、図鑑埋めが作業である事を認めたようなものだと思った。